ラスベガス銃乱射事件に関する銃規制の報道が少し混乱中

10月1日、ラスベガスのマンダレイ・ベイ・ホテルから大通りのラスベガス・ストリップで起こった銃乱射事件で、銃規制のニュースがあちこちで流れていますね。銃そのものを規制するべきという意見から、改造パーツの販売を規制するべきという意見まで幅が広く、それを全てまとめて「銃規制」と報道されているので、少しわかりにくくなっています。

※銃撃から逃げ惑う人々

犯人の凶器

スティーブン・パドック容疑者は、大量の銃と弾薬を持ち込んでいました。報道によると使用した凶器はAR-15と呼ばれる、アメリカ軍が長い間採用していたM16ライフルの市販バージョンです。アメリカでは引き金を引いている間、自動で弾が連射されるフルオート機能を持った銃の販売は禁止されていて、AR-15は引き金を引くと1発の弾が発射されるセミオート機能のみで売られています。

※AR-15はさまざまなバリエーションが販売されています。
しかし事件の映像を見ればわかるように、銃は連射されていてフルオート機能を有していました。容疑者の銃は改造されていたのです。200ドル程度でウォルマートでも買える、簡単なパーツが使われていました。

規制が緩いラスベガス

アメリカは州によって法律が違いますが、ラスベガスがあるネバダ州は銃の所持に関して規制が甘い州です。所有するための許可は不要で、届け出の義務もありません。所有する数に制限もなく、何丁でも持つことができます。口径による制限もないので、50口径の対物ライフル(自動車を撃つと、文字通り自動車が引きちぎれる破壊力を持つ)も個人で持つことができます。

※50口径の対物ライフル。こんな巨大なものを個人で何に使うんでしょう?
ネバダ州にも銃規制派の人もいて、銃の購入時の身元確認を強化する法律を可決することに成功しました。しかし未だ施行されておらず、そもそも誰が身元確認をするのかで揉めています。法律にはFBIが行うと書かれていますが、FBIは州の法律で動くことに否定的です。彼らは連邦法で動く組織だからです。

銃規制を求める声

(1)改造パーツの規制
今回の事件で、容疑者はセミオートの銃をフルオートにできる改造パーツを使用していました。これは合法的に入手が可能で、届け出も何もいりません。この改造パーツを規制しようという声が強く、銃の所持を推進している全米ライフル協会も、規制すべきと声明を出しています。これが今、最も多く言われている規制です。

※バンプ・ストックと呼ばれる改造パーツ。
(2)攻撃用銃の規制
また攻撃用の銃を規制すべき、という声も出ています。攻撃用の銃とは軍用銃などで、人を撃つために設計された銃です。今回の容疑者が使ったAR-15などが該当します。攻撃用ではない銃は、スポーツ射撃用や狩猟用などです。実はこれら攻撃用の銃を規制する「アサルト・ウェポン規制法」が94年に可決したのですが、時限立法だったので04年に失効しています。これを再施行するか、もう少し強化した形で施行するのを求める声があります。

※レミントン社の代表的な狩猟用ライフル。しかし軍隊では狙撃用として広く使われています。

(3)届け出の強化
現在は、多くの州で購入時に届け出が必要です。この届け出を強化すべきという声もあります。届け出が義務づけられている州でも、ガンショーで購入するときは届け出が不要など、抜け穴が多いといわれています。そこで全ての購入者が、銃を登録するようにしようという声です。

銃規制に反対する人達

(1)法的な根拠
市民が銃を持つ権利は、合衆国憲法修正第2条が根拠になっています。

規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない。

この条文を根拠に、アメリカの自由は、銃を持たない権利も持つ権利も保障するという意見です。

(2)銃の登録はプライバシーを危険にさらす
銃を購入する度に登録するということは、購入者のプライバシーを危険にさらすだけで効果がないという声があります。犯罪に使われる銃の多くは不法に入手された拳銃なので、健全な市民を規制するだけになります。

日本でも、暴走族対策で道路の制限速度をさらに低くした例があります。そもそも法律を守る気がない暴走族に対して効果がないだけでなく、法律を守っている一般市民に不便をかけるだけと批判されました。同じような理屈で銃の登録も批判されています。

(3)銃が人を殺したことはない
銃が人を殺すのではなく、常に人を殺すのは人だという考えです。銃を法で規制して殺人が減るのなら、殺人を法で禁止すれば良い。現状でも殺人が法で禁止されているのに殺人が減らないのだから、銃を規制しても殺人が減るわけではないという意見です。

(4)そもそも銃を持つことが基本的な権利
開拓精神を根底に持つアメリカでは、銃を規制すること自体が非常識な考えだと思っている人もいます。アメリカ人が持つ基本的な権利として捉えている人もいて、選挙権以上に根源的な権利だと言う人がいます。こういう人達にとって、銃規制はあまりに愚かでバカげた考えということになります。

※全米ライフル協会(NRA)は、強力なロビー団体で銃規制に強く反対しています。

まとめ

私たち日本人には分かりづらいことですが、アメリカにとって銃の問題は根深い問題です。銃で国を作ったという自負がある以上、銃を否定することはアメリカの歴史や文化を否定することと受け取る人もいて、一筋縄ではいかないのです。

そのため銃規制にもさまざまなレベルがあり、それらを一言でまとめると誤解を招くことになりかねません。今回、トランプ大統領が規制を検討すると言い出したのは、改造パーツの規制に関してで、攻撃用銃の規制や登録に関しては何も明言していません。


今後、これらの規制の話が出てくるかもしれませんので、その時はまとめて書きたいと思います。
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